※今回話にでてくる施設と写真は別ですので、あらかじめご了承ください。
現場指導の中で、試行錯誤を繰り返している、ひとつの施設があります。
それがとある放課後等デイサービスの施設さんなのですが、僕だけではなく職員の方も試行錯誤し、毎回工夫を重ねながら一緒になって、子ども達の成長に向けていろいろなアプローチを試しているといった状況です。
そもそも放課後等デイサービスというものは、低学年から高学年など年齢幅も広く、発達の遅れの症状や特徴もさまざまなので、それをひとつにまとめ上げることが簡単なことではないのですが、その施設には、さらにある特徴があります。
何かというと、児童のほとんどが高学年ということです。高学年が中心の放課後等デイサービスさんだと、子どもたち同士でよく衝突することが増えるといった印象が経験上あります。
それは、この年齢の成長段階と言えるのですが、自分の考えや感情などが育まれていく中で、自分が納得するように理由を大人や周りに求めたり、周りの言動に対して納得できないことが増えていくのがひとつの要因として考えられます。
ですがその反面、子どもらしさも残っており、納得する理由であっても、今現在の感情で反発したくなったり、長期的や多角的な角度で考えられないため、その瞬間での考えでしか判断できないという側面があります。
今回お話に出している施設に関しては、運動指導を導入されて3年目に入るのですが、最近になり、運動に対して少しネガティヴな反応が出てきたときがありました。
本来なら、初めのころは運動がイヤで運動あそびを体験していくごとに運動が好きになりハマっていくのが多くのパターンです。
この施設もそのパターンで運動が苦手や嫌いな子が、どんどん好きになっていく姿に、僕も施設の職員も感じられ喜んでくれていましたが、これが小学5年生や6年生へと成長しこのような反応が見られるようになりました。
- いまはパソコンで遊びたい
- この運動、苦手だからやりたくない
- あいつと一緒だから嫌
- こんな運動して何の役に立つの
- 好きな運動だけしたい
といった感情を持つようになってきたのです。
僕としては、だからこそ遊び感覚でできる運動あそびで、苦手な感覚や筋力の弱さを伸ばし、社会に適応できるよう集団ゲームを通し、他人の意見を理解しながら協力する力を身につけて欲しいと思っています。
こちらは施設の方も同じ考えで、一緒により良い方法を考えていきました。
ただ、子ども達の成長を願い、こちらがして欲しいこと(運動あそびを活用して他者理解や感覚と身体作り)を提供しても、実際はできないことを凄く嫌がったり、集団ゲームにより喧嘩が起こるといった事実があります。
子ども達にとって必要な運動を楽しめていなく、これらを「やらされている」と受け止め、窮屈に感じている子ども達がいる現実のギャップに、僕自身、どう対応すべきか迷っていました。
そんな中、この日の運動あそびで普段とは違うアプローチを試してみました。
それは、メニューの中に「自由の選択肢を作る」ことです。
例えば、ボール遊びをするとしても、
「好きにボールで遊んでもいいけど、先生が笛を鳴らしたら体のどこかで止めてね。
次に笛を鳴らしたらさっきとは違う場所で止めてね。」
といったように、メニューの中に自分たちで選択する余白を作るようにしてみました。
すると、子ども達にとって「自分で決める」という作業が入るため、「やらされている」ではなく「自分で進んでしている」といった反応に表情が明るく変わっていきました。
更にラスト15分に関しては、ボールやビブス、マーカー、どれを使っても良いので子ども達でやりたい遊びを決めてもらうという方法を取るようにしてみました。
すると、意見がぶつかることもありますが、全員で遊ぶといった目的があるため、
- おれは鬼ごっこしたいけど、今回はドッジボールにして、次回鬼ごっこでいいんじゃん?
- 勝手に話進めないで、○○の意見聞いてから決めようよ!
- 自分の意見ばっかじゃなくて、みんなで決めようってば!
- みんな自分のことばっかだから、多数決で決めようぜ!
といった協調しようとする働きが見えるようになったのです。
僕が決めた集団ゲームでもこのような話し合いはありましたが、やはり「やらされている」という心持ちだったことから、話し合いに関してもどっちでもいいというテンションの子が多く、本当の意味での話し合いにはなっていませんでした。
今回の取り組みを始め3ヶ月ほど月日が経っているのですが、運動あそびが好きになっていたころの雰囲気に戻ってきたように感じています。
また脳に刺激を入れる運動や身体を作る運動も、「この運動だけは先生がみんなにして欲しい運動だから取り組んで欲しい」という要望を受け止めてくれるようになりました。
職員の方からも、大枠だけ大人が決めて、細かい部分を子ども達だけで話し合い調整していくという手段を他の場面でも活用して、子ども達に良い変化が見られていると感謝の言葉をいただきました。
拒否反応が強いと、大人も体力を使うと思うのですが、諦めずに今の彼ら・彼女らに適切な手段を模索していけば、こちらの気持ちに振り向いてくれると改めて感じることができた出来事でした。
最後に、その施設で一番気の強い5年生の男の子と片付けをしながら、先日こんな会話をしました。
「○○、いつもお手本とか集団ゲームとか、みんなと意見まとめようとしてくれて、ありがとう。」
すると、その男の子が、
「はっ?こっちこそ、いつもありがとうだし!!!
毎月いろんなこと考えて教えてくれて、こっちの方がありがとうって思っているから!!」
なかなか人に感謝を伝えることができないのが課題だった男の子のまさかの返答に、驚きと嬉しさで心がジーンときました。
まだまだ相手に伝える言葉の選び方に課題を残している子達ですが、ときにぶつかり合いながらも全員で一緒に成長していけたらと思います。